あの悲惨な震災から丁度一年目を迎えた、2012年3月11日。。。
マドモアゼルが大学を卒業した。

大きな肩の荷を降ろす気持ちで、卒業式に列席した。
スーツや紋付袴の男子、華やかな着物に袴をつけた女子。
明るい笑顔で卒業式に臨んでいるように見受けられた。

昨年は多くの学校が卒業式を取りやめにした。
今年は、こうやって卒業式を迎えられただけでも、幸せなのだろう。

マドモアゼルの高校の卒業式には、故有って列席できなかったので
大学の卒業式に列席するのを、心から楽しみにしていた。
きっと涙が溢れて止まらないだろうと思っていた。

学位修了証を授与されている若者達を見つめながら、
マドモアゼルを含め彼らの来し方行く末を思い、
胸が熱くなりはしたものの、涙は出無かった。

マドモアゼルはペシミストの現実主義者だ。
私の思春期から青春時代は、オプティミストの夢見る夢子ちゃんだったので、
10代の頃の、彼女の夢の無い現実的な発言に
「何て夢の無い事言ってるのよ！若者が夢見なくてどうするの！」と言った時の彼女の反論。
「私達世代に、夢見ろと言っても無理でしょう？　生まれてすぐにバブルは崩壊するし、
先行きに希望も見えて来ないし。。。」

返す言葉が無かった。

少し前にツイッターでツィートされていた文章。
「平成元年生まれの人生を1年1話でアニメに見立てた場合、1話で平和な日常を見せつつも2話でバブル崩壊、しばらく日常回が続いたと思ったら丁度1クール終わる13話で9.11同時多発テロ勃発、2クール入って20話でリーマンショック、23話で東日本大震災が起きて後2話でどうすんのこれ状態」

マドモアゼルはまさしくこの世代なのだ。

私達の前の世代は、悲惨な戦争を経験し、
戦後の復興を必死になしとげた世代。
私達は、先達のお陰でもあるバブルと平和を享受した世代。
そしてそのつけを、払わせられようとする彼女達の世代。

阪神・淡路大震災、東日本大震災と、2度の大震災。
そしてつい最近、東京の直下型地震の想定最大震度が７に引き上げられた。
年金制度も崩壊しそうで、彼女達の世代に重い責任がのしかかる。

社会への第一歩を踏み出そうとしている彼女達を前に、
生きる希望を失わずに、日本を見捨てずに頑張って欲しいと願いつつ、
申し訳なさが、胸に残る。

大震災は天災だとはいえ、原発事故は人災の体が強い。
バブルを享受しながら、崩壊をとめられなかったのも大人達の責任だ。
年金制度を含め様々な社会のしくみを、知らなかったというのは、
知ろうとしなかったと言う事でもある。

肩の荷をおろしたつもりだった。
マドモアゼルが社会人として歩み始めれば、
それで私達夫婦の子供への責任はほとんど果たしたと思っていた。

卒業式に列席しながら、それではあまりに無責任なのだと感じた。
私達大人が作って来たこの日本という国を、少しでも未来ある国にする為に
マドモアゼル達がこの国に生まれて来て良かったと思える国にする為に
微力でも努力し続ける事が、彼女達へのお詫びの気持ちなのだと思う。
あまりにも大きな問題を前にして、ちっぽけな私に出来る事が
あるのだろうかと思うだけで目眩さえ感じる。

１番最初に出来る事。この山積みにされている問題から目をそらさない事から始めようと思う。
そしてこの国の今の悲惨な現状は、自分にも責任があるという事を自覚するのが
とても大事な事なのだろうと思う。

その中から自分が何をすべきかと言う事がきっと見えてくると信じて、
この国の未来を担わねばならない若者達に、エールを送り続けたい。

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